190307 さよならミニスカート ©牧野あおい/集英社

©牧野あおい/集英社

多くの電車に女性専用車両が導入されて久しいが、いまだに「女性贔屓」や「車両の無駄遣い」と言われることも多い日本。『さよならミニスカート』(牧野あおい/集英社)でもそれが取り上げられた際、男子は「専用車両に乗る奴ほどブス」と言い、実際に痴漢被害に遭っている地味で抵抗できない女子は乗りたくても乗れない状態になっている。

元人気アイドルグループのセンターだった花恋は、握手会で見知らぬ男に刃物で切りつけられて引退した。世間では「アイドルならその程度のことで」と叩かれたが、実際はファンを疑うようなことをしてまでアイドルでいたくなかったからだ。そして長い髪を切って親しか知らない街に引っ越し、一人暮らしをしながらスラックスの制服を着て、本名で高校に通っている。

ある日、クラスの男子に正体をわかっていたと打ち明けられた。妹が学校の担任からセクハラに遭い、引きこもりになったという。「女だから」と自分を責める妹を立ち直らせてくれたのが、花恋のいるアイドルグループだった。大勢の前でミニスカート姿で笑顔を振りまいて、誰にも平等に優しい彼女たちを見て「女の子でもいいんだ」と妹は救われたという。

さまざまな形で「女」の損得が描かれているが、確かに身体が大きく力も強いというだけで、男性は恐怖の対象になるだろう。そこに個々で他の要因もあればなおさらだ。男子は「ミニスカート履くんなら、触られてもいいんだろ?」という感覚。もちろん犯罪はいけないが、女子ももっと自衛しろという意見も混じる。それは今の現実の日本でも同じだ。

スカートは男に媚びる服ではない。女性の象徴でもない。アイドルはおもちゃではない。多くを考えさせられる作品だ。

(担当ライター:桜木尚矢)

 

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