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©カメントツ/小学館

どんなに文明が進歩しても、人間が必ず求めるのは“ぬくもり”と“癒やし”。日本の漫画界も例外ではなく、癒やしに特化した物語『こぐまのケーキ屋さん』(カメントツ/小学館)が昨年から異例のヒットを飛ばしている。

主人公はコック帽をかぶった子熊。人の言葉をしゃべりケーキ作りが得意な彼(?)は、ケーキ屋さんを開いた。ほどなく店を気に入った優しい青年が、店員としてお手伝いに参加。この一匹と一人がおりなす愉快で心温まる日常風景が4コマ形式で描かれる。

本作最大の特長は、なんといっても店長である子熊の愛らしさだろう。ケーキ作りの腕こそ一級品だが、それ以外はお金を数えられないほどの世間知らず。おまけに怖がりでドジだけどそこがキュートで、彼をフォローする店員さんの優しさも際立ってくる。時には一緒に新メニューを考え、どんぐりを拾い、流れ星に願いをかける。なんでもない日々のやりとりが読者の気持ちをほぐし、癒やしを与えてくれるのだ。

ちなみにこの作品、最初から商業用に作られたのではなく、作者が落ち込んでいる友人のために描いたものだという。それをTwitterに載せたところ評判が広がり、累計100万以上もリツイート(共有)されて拡散。書籍として出版されるやすぐさま重版が決まる人気ぶりで、発売わずか1ヶ月で20万部に到達した。

話題作を生み出したいなら過激で斬新なアイデアを!と言われがちなエンタメ業界において、この作品は真逆のアプローチで成功をおさめた。当たり前に見えることでも心をこめて丁寧に取り組めば、多くの人から共感を得られる――これは創作に限らずビジネスなどにも活かせる、重要なヒントではないだろうか。

(担当ライター:浜田六郎)

 

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