Ⓒおおのこうすけ/新潮社

炊事洗濯は女性の役割だという価値観が薄れて久しい日本。その流れはエンタメ作品にも波及しており、不良や極道などコワモテ男性を主役にした料理漫画が近年増えつつある。今回はその1つ、ネット中心に支持を集める話題作『極主夫道』(おおのこうすけ/新潮社)を紹介したい。

主人公は全身に龍のタトゥーを刻んだ元・極道の男。対立する暴力団の事務所を1人で壊滅させたこともある超武闘派で、通り名は“不死身の龍”――。そんな彼は現在、愛する妻のため主夫業に専念していた。刀傷がある怖い顔にサングラスと黒スーツ、だけど可愛いエプロンを身につけて完璧に家事をこなし、ご近所の奥さんたちと料理教室やヨガに通う。そんなほほえましい日常を描いたホームコメディだ。

本作は主夫を題材にしただけではなく、そこに元ヤクザという強烈なエッセンスを加えたのがポイント。どこから見てもカタギでない男が料理の出汁をとり、衣類のシミ抜きをし、妻の笑顔をなにより大切に考え、スーパーの特売にはしゃぐ様子は見ているだけで癒される。ときおり極道時代の知り合いと再会して一悶着あったりするがバイオレンス描写は少なく、安心して読むことができる。

このタイプの漫画が増えてきたと冒頭で述べたが、いずれの主人公にも「怖い外見、強い腕っぷし、ナイーブな内面、そして炊事洗濯などの女子力」が共通している。治安が良いため男性に腕力は不要とされ、中性的な見た目や家事スキルを求められるようになった現代社会。だけど男としては強くもありたい……! そうした日本男児たちのジレンマ、あこがれが“元最強ヤクザの主夫”を誕生させ、『極主夫道』がヒットを飛ばす原動力になったのかもしれない。

 

(担当ライター:浜田六郎)

 

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