180209

WHO(世界保健機関)加盟国194カ国を対象に毎年行われている、平均寿命ランキングでは常に上位にランクインし、長寿大国と言われている日本。しかし一方では少子化が問題視され、高齢化社会に危機感を覚えている若者が少なくないのも事実だ。

そんな今、話題になっている漫画が『傘寿まり子』(おざわゆき/講談社)である。主人公は、ベテラン作家の幸田まり子という、80歳のおばあさん。心身ともに健康ではあるが、やはり加齢による疲労感や、低下していく行動力には逆らえない。出版社の担当者にも心配され、できる仕事量も減り、作家仲間も亡くなったりして、自分も物忘れをすることが増えたと実感している。

夫は15年前に他界しており、現在は夫の建てた大好きな我が家で4世代同居をしているのだが、まり子にとってはそこが終の棲家になるはずだった。しかし、本人の知らないところで家族が家の建て替えを検討していることを知る。「自分が生きているせいで、あとがつかえている」と感じてしまうまり子。そして追い打ちをかけるようにかつての作家仲間が亡くなり、それが孤独死だったと聞いた。

弔問に訪れた際、亡くなった仲間も4世代同居で、なのに発見されるまで3日かかったと知る。まり子が声を掛けた家族は、「嫌味ですか」と怒りを露わにし、「自分の生活でいっぱいいっぱいで、年寄りにまで気を配れない」と言い放つ。まり子は思わず、その見知らぬ家族に泣いて謝ってしまった。「まだ生きててごめんなさい」と……。

そして自分の新たな居場所を求めて家出を決意し、まり子は再スタートを切る。家族に迷惑はかけたくないという高齢者に、生きているだけで罪悪感を感じさせたくないものだ。

(担当ライター:桜木尚矢)

 

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