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景気拡大や失業率の低下にも関わらず、依然として進みつつある日本人の晩婚・非婚化。そうした世相のなか、インパクトある高齢出産の漫画が各種メディアやウェブで話題だ。そのタイトルは『セブンティウイザン』(タイム涼介/新潮社)で、「70歳の初産」を意味している。

主人公は江月朝一(65歳)と、夕子(70歳)。見合い結婚して40年間、子宝に恵まれなかった老夫婦である。しかし朝一が定年退職する当日、夕子にまさかの妊娠が判明した。ギネス級の超高齢妊娠にあわてふためく朝一だが、夕子は「産みます」ときっぱり表明。妊婦健診、パパママ教室への参加、やがて出産、育児と目まぐるしい日々が続いてゆく。

本作の特徴は、この歳での出産を奇異なもの、無茶な選択とは表現せず、ひたすら“家族の愛”にフォーカスして描いたところだ。無事に出産できるのか、産まれても自分たちは我が子が成長するまで生きていられるだろうか。読者と同じ視点で心配する朝一に対し、夕子はどこか超然としており、ごく普通の母親のように出産をなしとげた。それに引っぱられるように朝一も、タバコをやめるなど父親としての自覚を強めていく。いたるところで夫婦お互いの、子どもへの、さらに他界した愛犬への愛情が描かれ、思わず涙してしまうシーンもある。

もちろん現実は漫画と違うので、結婚や出産を望むかどうかは人それぞれだ。この作品も出産を推奨すること自体がテーマではない。ただ、「生まれてきてよかった!」などストレートな感情表現ができるキャラクターを見ていると、私たち読者の心もどこか突き動かされるものがあり、また少子化社会を考えるヒントにもなるのではないだろうか。

(担当ライター:浜田六郎)

 

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