性別「モナリザ」の君へ。_01 Ⓒsumuji YoshimuraSQUARE ENIX

©Tsumuji Yoshimura/SQUARE ENIX

“幼少期は性別のない身体で過ごす”という世界観を持つ漫画『性別「モナリザ」の君へ。』(吉村旋/スクウェア・エニックス)。この世界では通常、12歳頃に自然と無意識が傾いた方の性へ身体が変化し、以降その性で生きていく設定だ。幼い頃から仲の良かったしおりとりつの2人は、それぞれ男女に分かれたが、主人公・ひなせは18歳になる春、いまだ性が決まっていない。

本作のタイトルにも入っている名画「モナリザ」には多くの謎が残されおり、両性具有の美を込めたものではないかとも言われている。ダ・ヴィンチがモナリザを「完璧さと中立性という理想を体現した美」として愛したと美術の授業で聞いたひなせは、「両方の性を持つ者が幸福なる統一体なら、何一つ持たない者は何になるの?」と問いたかった。

12歳を過ぎても性が決まらない珍しいこの症例を、作品世界の中では「準モナリザ症候群(仮)」と呼んでいる。ただでさえ周囲は男女に変化していき、体育の授業なども性で内容が分けられる。これを「差別的だ」と言うのは簡単だが、ならばどう解決するのか? 男になったしおり、女になったりつの両方から告白される出来事などが、ひなせに容赦なく現実を突きつけてくる。

もしも好きになる相手や自分の好みで性が選べるなら嬉しいかも知れない。しかし12歳という年頃はまだ未熟でもあり、誰もが明確になりたい性を自覚しているわけではないだろう。そこでまったく変化がなく、性が定まらないまま18歳を迎えるひなせの不安や動揺、諦観などに、私たちの現実世界と同様な男女のあり方、“性”の難しさが見える。人間贅沢なもので、性があったらあったで厄介だが、なければないで困るのだ。

(担当ライター:桜木尚矢)

 

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