景気が上向いてきたと言われる現在の日本。しかしニュースでは頻繁に「ブラック企業」の話題が登場し、そこで働く人の苦境が報じられている。賃金に見合わない理不尽な労働を強いられる社員は「社畜」という俗語で呼ばれ、その凄惨な日々をコミカルに描く漫画が最近ネットで話題だ。今回は『社畜! 修羅コーサク』(江戸パイン/講談社)を紹介したい。
主人公の図画コーサクは武辣苦(ブラック)商事に勤めるサラリーマン。会社にすべてを捧げてきたコーサクだが、なぜか無法地帯の墓多死社(ハカタシシャ)へ左遷され、同僚・上司・取引先すべてが常識外の環境で働くことになった。しかしコーサクは負けない。東京の通勤ラッシュで鍛えた回避技「社畜回避」、プライドを捨てて相手に教えを請う「社畜リサーチ」、ありえない低さまで頭を下げ取引先の機嫌を直す「社畜謝罪」など、エリート社畜ならではのスキルで修羅の世界を生き延びていく……。
内容はコミカルテイストに仕立てられているが、話の通じない上司、陰湿な新人いびり、自分に非がないのに会社のため謝罪しなければならない状況などは、まさに現実世界で働く「リアル社畜」の日々がモデルだ。一度でも社会に出た経験のある読者なら、ワハハと笑った直後に、妙な脱力感に襲われるのではないだろうか。
ちなみに最近の日本は社員だけでなく、非正規の従業員にまで過酷な労働を強いるケースが増加し「ブラックバイト」という言葉も定着してきた。社畜をパロディ化した漫画が話題を呼ぶ一方、現実のブラック企業がフィクションの先を行っているとも感じられる。景気回復した後は労働環境の改善を切実に願いたくなる、そんな社会派(?)の漫画である。
(担当ライター:浜田六郎)