男子のイジメというとまず暴力が浮かぶが、女子の場合は非常に執拗で陰湿だ。中学時代にそんな辛い経験をした女子高生が主人公の『君に愛されて痛かった』(知るかバカうどん/新潮社)は、スクールカーストや女子特有の仲間意識などにスポットを当てつつも、子供たちが抱える闇にも触れられている作品である。
過去のイジメがトラウマになり、高校生になってからはひたすら目立つ女子に合わせてきたかなえ。しかし、家庭内にも問題を抱えている彼女は、援助交際をすることで承認要求を満たしてきた。ところが友人とのカラオケで知り合った他校の男子に、ある日その現場を目撃されてしまう。彼がかなえを気に掛けたことで、以前から彼に思いを寄せている友人に関係を誤解され、たちまち仲間外れに。
日本では、こういった精神的に追い詰められるイジメで、自ら命を絶つことを選ぶ少年少女が多いのが実態だ。日本人のみならず、多くの人はスクールカーストを経験しただろう。ただ、半分より上にいる人はそれを自覚していないだけで、最底辺にいる者にとってはすべてが憎く許せない。どうして自分だけが……そう思うのも無理もなく、それが自殺に結びつくか、他者を傷付ける側に回るかに分かれやすくもある。
女子目線で言えば、イジメの理由が「陰キャ(地味でおとなしいタイプを蔑んだ言い方)に人権なんてなくない?」という程度にしか捉えられていないことも多く、加害者意識がないように映る。また時と場合と機嫌によって態度が変わりやすいのも特徴のひとつ。顔色を窺う方にしてみればとても読みにくく、一緒にいるだけでストレスだ。漫画とは言え、非常に核心を突いていると言える。〈普通〉は難しく、得難い。
(担当ライター:桜木尚矢)