昔は日本人にとって理想の男性像といえば、強く逞しいイメージだった。しかし近年、女性が好む男性は「色白」「細い」「清潔」など、中性的なタイプに変化しつつある。特に清潔感の優先度は高いらしく、メンズ向けの美容ビジネスは市場規模を急激に拡大している。そうした風潮のなか、潔癖症の主人公が活躍する漫画『潔癖男子!青山くん』(坂本拓/集英社)が話題だ。
サッカー部に所属する青山くんは、U-16日本代表に選ばれるほどの天才的プレイヤー。しかし異常な潔癖症で、試合中は接触プレイもヘディングもすべて(汚れるから)御法度。そもそも弱小サッカー部の高校を選んだのも「トイレがウォシュレットだから」「ユニフォームが清潔感ある白だから」という驚きの理由だった。そんな青山くんと、彼に興味をもった仲間たちの日常がコメディ調に描かれる。
おもしろいのは主人公の潔癖さだけでなく、泥臭い側面も描写している点だ。超負けず嫌いな青山くんは試合のラスト5分間だけ“潔癖の誓い”を解き、汚れながらも毎回スーパープレイで勝利に貢献する。また、卑劣な敵チームにはラフプレイも辞さない。清潔なイケメンながら無愛想でガンコ者、本気を出すと誰よりも荒々しい。そうした多面性がキャラクターに深みを与えている。実際に読者からの評価は高く、2017年にはTVアニメ化を果たした。
昨今の中性化してきた「理想のオトコ像」には賛否両論あり、とりわけ保守的な層からは反発も少なくない。しかし本作の青山くんのように、新旧両方の男性イメージを持ちあわせているならば異論は出にくいだろう。これから日本のオトコが目指すべきは、彼のような姿と生き様なのかもしれない。
(担当ライター:浜田六郎)