『ドラゴンボール』などに代表される格闘バトル漫画は、日本で絶大な人気を誇るジャンルだ。それらは「誰が最強か?」「どの格闘技が最強か?」がテーマだが、ついに「どの武器が最強か?」を問う斬新な作品『MASTERグレープ』(原作:土塚理弘・作画:高橋アキラ/小学館)が登場した。
主人公の佐倉は、勉強とゲームが取り柄の中学生。ある日、武器をもった不良集団に街で絡まれ、「杖術」と「剣術」を使う同年代の2人に助けられる。その強さと正義感に憧れた佐倉は彼らがともに武道の名門校と関係していることを知り、同じ学校を受験した。そして武道部でめでたく2人と再会し、彼自身も「薙刀(なぎなた)」修業を通じて“武器”の奥深さに目覚めていく。
まず特筆すべきは、武器の多彩さだろう。剣、槍などメジャー路線からトンファー、長巻などマニアックなものまで登場、これらが大会では(ソフト素材で)殺傷能力を弱められ、選手たちが本気で打ち合う。また、作中で猛者と呼ばれるキャラの大半が「弱者」なはずの小柄な少年だったり、か細い女性だったりするのも珍しい。武器を使いこなせば体格差のハンデを帳消しにできる……というのも武器をテーマにした作品ならではだ。
治安が良い日本では“武器”アレルギーが根強く、凶悪な暴漢をやむなく射殺した警察官が非難を浴びるほどである。犯人を刺激しないよう非武装・無抵抗でいるべき、と主張する人もいる。だが無差別の凶行がしばしば起こるようになった昨今、若い世代を中心に日本人の意識が変わりつつあるように感じる。武器は遠ざけるものではなく、理解して役立てるもの――『MASTERグレープ』を読んでいると、考えさせられることが多い。
(担当ライター:浜田六郎)