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いかつい顔のリーゼント少年が拳と友情で不良の頂点に登りつめる――1980~90年代に全盛期を迎えた、日本のヤンキー(不良)漫画。最近は少子化によりヤンキーそのものが激減したためか、漫画の中でも彼らの姿を見かけることが減った。そんな時代に、ユニークな切り口の『頂き!成り上がり飯』(奥嶋ひろまさ/徳間書店)が人気を博している。

主人公は荒れ果てた不良高校に入学した少年・ケニー(通称)。さっそく3年生の最強番長に挑むが返り討ちに遭い、自信を喪失する。おまけに自作の弁当まで奪われ屈辱を上塗りされるが、その美味しさに番長が感激したことで彼の学校生活は大きく変わった。腕力じゃない、自分だけの武器「料理」で不良たちの心をつかみトップを目指す! そんなケニー君の成り上がりストーリーが描かれる。

アクションシーンも多く登場するが、あくまでメインは料理。幼い頃から家庭の事情で自炊をしてきた主人公の手料理によって、どんなに荒んだ者も温もりを感じ「こいつとは争いたくない」と味方に引き込まれてしまうのだ。ただ殴り合って相手を倒すのとは違ったカタルシスが得られ、読者からの評判も高い。

ヤンキー漫画全盛の時代、現実世界の学校でもとことん社会に反抗する不良か、まじめに勉強して良い企業に就職する優等生か、学生の進む道はシンプルだったように思える。しかし価値観が多様化してきた今の若者には、学歴や暴力とは違った選択肢がいくつもある。腕っぷしがナンバーワンである必要はない、まわりの胃袋と心をつかんでトップに立つ不良少年がいてもいいじゃないか……。『頂き!成り上がり飯』の誕生は、そんな現代日本の世相を反映したものかもしれない。

(担当ライター:浜田六郎)

 

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