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近年、人工知能(AI)の進歩はすさまじく、その影響は日本の伝統的遊戯にまで及んでいる。超天才がひしめく将棋・囲碁のプロ棋士に対し、現時点でAIが優位に立っているほどだ。しかし人々が“生身の対局”に興味を失ったわけではない。それを教えてくれる人気漫画として『ハチワンダイバー』(柴田ヨクサル/集英社)を紹介したい。

主人公の菅田は、将棋のプロ棋士一歩手前で挫折した青年。対局に金銭を賭けるアマチュア棋士(真剣師)として覇気のない生活を送る菅田は、ある日、異常に強い美少女真剣師・そよと出会い、人生が激変する。そよの最終目的は、家族を死に追いやった裏の真剣師集団「鬼将会」を倒すこと。プロ以上の棋力と、国家転覆も可能な武力を持つ「鬼将会」に対し、そよに惚れた菅田は仲間とともに挑む。そんな特大スケールの将棋ドラマである。

将棋の勝敗で生死すら決まる世界観での対局シーンは、恐ろしい緊迫感に満ちている。登場する棋士は、敵の攻撃を受けきって倒す者、盤上の駒と対話しながら指す者、怪力で盤面に駒をめり込ませる者など、プロアマ問わず個性豊か。主人公も81マスの盤面(ハチワン)に深く精神を潜らせる者(ダイバー)として、愛する女性を守るため急激に成長していく。

将棋も囲碁もプレイ人口が減少傾向と言われるが、最近はネット対局環境の充実もあって、人気を盛り返している印象がある。現代のアマチュア棋士はAIを自分のコーチ役にして、対局後に最善手を検討させたりもしているそうだ。あくまでAIはライバルでなく補佐役、やはり対局するなら人間同士が一番楽しい――ネット棋士たちや『ハチワンダイバー』読者の多くは、そう感じているに違いない。

(担当ライター:浜田六郎)

 

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