「聖地巡礼」という言葉が示すように、漫画やアニメ、映画、ドラマの舞台に注目が集まることが少なからずあります。そうした作品の多くが結果としてそうなったのに対して、最初から一つの地域にスポットを当てた作品も増えています。『八十亀ちゃんかんさつにっき』(安藤正基/一迅社)は、愛知県の名古屋市を舞台とした作品で、名古屋で生まれ育った女の子がヒロインです。
物語は東京生まれの主人公である高校2年生の陣界斗(じん かいと)が、愛知県に引っ越して、名古屋の学校に編入するところから始まります。そこに登場するのが名古屋っ子の女子高生、八十亀最中(やとがめ もなか)です。変わった名前のキャラクターは漫画の定番ですが、ヒロインの名字である八十亀(やとがめ)は、名古屋弁で「久しぶり」や「ご無沙汰です」などを意味する「やっとかめ」から来ているようです。彼女とともに名古屋の面白い物事に興味津々の陣ですけれども、東京をライバル視する八十亀は、陣のことを「トーキョー」や「おみゃあ」(名古屋弁で「お前」の意味)と呼んで、なかなか距離が縮まりません。そんな日常を描く、名古屋愛の溢れるコメディに仕上がっています。
元は愛知県一宮市出身の作者、安藤正基氏がTwitterに投稿した作品でしたが、ネット上での人気を受けて、2016年から「月刊ComicREX」にて連載が始まりました。なんと2017年2月には、ヒロインの八十亀が名古屋市から観光文化交流特命大使に任命されています。ちなみに本コラム執筆者も、名古屋ではありませんが愛知県の出身です。東京、大阪に挟まれた名古屋が『八十亀ちゃんかんさつにっき』ヒットとともに、もっと注目を集められることを願います。
(担当ライター:県田勢)