日本では近年、『翔んで埼玉』(魔夜峰央)、『お前はまだグンマを知らない』(井田ヒロト)、『東京都北区赤羽』(清野とおる)のように、一部地域をテーマにした漫画が人気を博している。今回紹介する『ローカル女子の遠吠え』もその1つで、静岡県出身の作者である瀬戸口みづきさんが“しぞーか”――つまり静岡ネタと静岡への愛をこれでもかと盛りこんだ4コマ漫画だ。
物語は、主人公である有野りん子が東京の荒波にもみくちゃにされて、実家のある静岡県にUターンしたところから始まる。彼女の家族は言うまでもなく、彼女を取り巻く職場の同僚や友人知人は静岡県民ばかり。しかし、彼ら彼女らの言動により、浜松市あたりの西部、静岡市近辺の中部、富士山付近の東部、そして伊豆半島と、静岡県でも違いがあることが分かる。
富士山、お茶、徳川家康を始めとした静岡ネタは静岡県民でなくても興味を引くのだが、ここでキーパーソンとなるのが、りん子の同僚である雲春柳二だ。東京出身ながらも左遷されて静岡に来た彼の視点や発言は、静岡県民でない人の視点だったり代弁だったりをしているところがある。笑うだけで終わることの多かったローカルネタが、笑いはそのままに地方ならではの魅力として注目する雰囲気になっている。そうしたご当地漫画の中でも、本作は屈指の一作に違いない。
作者にとってデビュー11年目で初の重版作品となった『ローカル女子の遠吠え』は、転職サイトとのコラボにつながり、作者本人がラジオやテレビ出演を果たすまでに至った。静岡県から発生したローカルネタの大きな波が、どこまで広がるか楽しみにしたい作品だ。
(担当ライター:県田勢)