180726 フラジャイル1巻_(c)さの隆/講談社

Ⓒさの隆/講談社

医師を主人公としたドラマや小説、漫画はたくさんある。そんな中、あまり一般には馴染みのない病理医を主人公とした漫画フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(原作:草水敏、漫画:恵三朗/講談社)を紹介したい。

多くのフィクション作品に登場する臨床医は、患者によりそい、白衣をヨレヨレにして治療に取り組み、病気やけがの回復を喜ぶ。しかし病理医の役割は違う。医師や病院から持ち込まれた標本(細胞、血液、便など)を調べて病気を決定したり、亡くなった患者を病理解剖して死因や治療効果を追究したりする。つまり裏方だ。主人公である岸京一郎は、有能であるがゆえに他の医師と衝突することも多く、性格や態度は“極悪”と評されるほど。だが、それも自らの判断に自信をもっているからこそで、病気や治療を突き詰めるためには手段を選ばないシーンもある。

「フラジャイル」は、もろい、壊れやすい、か弱いなどを意味する英語の「fragile」。なぜこのタイトルが付いたのかは明らかになっていないが、人間のもろさと同時に、病理医の存在としての弱さもありそうだ。日本で約30万人いるとされる医師の中で、わずか2,000人程度しかいない病理医の多忙な姿も描かれている。

物語は、岸京一郎の所属する病理科に、新人医師の宮崎智尋が神経内科から転部するきっかけとなった話から始まる。しかし、ようやく独り立ちした彼女の病理判断が、担当する医師に採用されず、患者が亡くなる無慈悲な展開もある。2016年には長瀬智也、武井咲らでドラマ化され、2018年には第42回講談社漫画賞の一般部門を受賞した本作。医師らしからぬ医師に惹かれる読者は多そうだ。

(担当ライター:県田勢)

 

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