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10年前に有志の発案から生まれ、いまや日本のサブカルチャー界に無視できない影響を及ぼすほど成長したイベント「マンガ大賞」。その授賞式が3月に都内で行われ、『BEASTARS』(板垣巴留/秋田書店)が新たな大賞に輝いた。

舞台は人類がおらず、動物たちが文明を持った世界。全寮制のエリート高校に通うハイイロオオカミ少年・レゴシが主人公。大柄だが温和なレゴシを中心に、彼が想いを寄せる愛らしいウサギ、圧倒的カリスマで君臨するアカシカ、欲望に忠実なベンガルトラなど、多彩な動物たちの感情が学園内に交錯する。

ただ青春漫画のキャラクターを動物に置き換えただけかと思いきや、世界観設定やストーリー構成は秀逸だ。登場する動物キャラは肉食と草食に大別され、ちゃんと服を着て法律を守り、インターネットまで使う。だが一方で種としての本能は失っておらず、法で禁じられた「食肉」への欲求を抑えつつ生きている者もいる。そのせいで殴り合いや派閥争いが起きたり、違法な肉を売買する者が現れたりする。主人公も肉食種でありながら草食のウサギが気になってしまい、これは恋愛感情なのか捕食本能なのかと葛藤が絶えない。すべての描写がフィクションと思えないほど生々しく“リアル”なのだ。

また、「動物の違い」を人種や性別、国籍、宗教などに置き換えるだけで、人間社会を描いた作品としても読める。ほとんどの文明国は多様性を認め、マイノリティや弱者へ配慮した社会を作っているが、ちょっとしたことから争いは起こるし仲直りもする。読者が『BEASTARS』から目が離せないのも、動物キャラクターにどこか自分たちとの共通点を感じているからかもしれない。

(担当ライター:浜田六郎)

 

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